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6月の誕生石である真珠。ワードローブに華を添える宝石として女性に愛されている宝石です。また、現代だけでなく、これまで時代を越えて多くの先人たちをも魅了し、中東古代の人々は天から落ちてきた涙だと信じられ、中国では龍の脳で作られるのものとして、存在してきました。
真珠は有機体の宝石であり、海水産貝や淡水産貝の組織の中で生まれ育ちます。育つ過程や方法に違いがあり、それぞれ天然真珠と養殖真珠に分けられます。
天然真珠は貝殻に砂や寄生虫などが侵入し、それらの遺物の周りに真珠層が分泌されて形成されます。ただし。真珠の捕獲が数千年に渡って行われてきたため、天然真珠は生成する場所を失い、ほとんど見ることができずとても貴重なものとなっています。
養殖真珠は人間の手が加えられており、外套膜の切片を単独で行ったり、真珠母貝のシェルビーズを母貝に埋め込んだりするのです。海水、あるいは淡水で運営される真珠養殖所で育てられ、母貝は養殖場で洗浄された後、捕食動物に食べられることがないように保護され、採取されます。
天然真珠の減少もあり、現在販売されている真珠の大半は養殖真珠とされています。
養殖真珠のサイズや色、形は多岐に渡り、純粋さや謙虚さ、純潔さを連想させる宝石としても知られています。6月の誕生石の意味は「愛らしい純真さ」。上記で紹介した意味合いから、真珠は結婚のお祝いに贈るのが伝統的です。加えて、真珠は有益な財産をもたらすとも考えられており、長寿と財産の象徴でもあります。
なお、マンナール海峡やアラビア湾(ペルシア湾)は真珠が採取できる場所でしたが、スペインによる植民地支配が行われていた間、大量の真珠がメキシコやベネズエラ辺りから採取されており、現在では真珠はあまり見られなくなってしまいました。
あこや本真珠は日本書紀や古事記に登場するほど、古くから存在する代表的な真珠です。「真珠」と聞いて多くの人がイメージするのはおそらくあこや本真珠でしょう。現在日本で養殖されている真珠のほとんどがあこや本真珠でもあります。あこや本真珠の母貝自体はそれほど大きくなく、真珠も約2mm~10mm程度の大きさです。幾重にも真珠層が巻かれているのが特徴的で、上品な光沢が美しいことで知られています。
色はホワイトピンク系をはじめ、ホワイトグリーン系やクリーム系、ゴールド系などさまざまです。他の真珠と比べて分泌される結晶のきめが細かいため、丸くなる確率が高いです。一般的なサイズは7mmで、6mm以下のサイズは生産量が減っていることから希少性が高まっています。
真珠の評価は見た目が基準となりますが、花珠真珠は「巻き・照り・色・形・キズ」のすべてにおいて最高品質のものを指します。鑑別機関で認められた真珠のみ「花珠真珠」と称することができ、製品には鑑別書が付いてきます。花珠真珠はめったに採取することのできない希少性の高い真珠であり、評価基準の中でも「照り」が重視されます。真珠は性質上、どうしても経年劣化してしまうものですが、花珠真珠は巻きがしっかりとあるため劣化しにくいです。なお、鑑別は国内でも信頼度が高い、真珠科学研究所や真珠総合研究所で行われています。
南洋黒蝶真珠はタヒチ真珠や黒真珠と称されることもあり、南洋の黒蝶貝から生まれます。真珠の色は多岐に渡り、ブラック系やグレー系、グリーン系やレッド系など多様です。特に「ピーコックグリーン」は深い緑に赤みがかった色の反射が美しく、大変人気です。
白蝶貝という、南洋真珠の中でも大きい真珠貝から取れるのが、南洋白蝶真珠や白蝶真珠です。真珠貝の大きさよりも大きい直径19mmほどまで育つ真珠があったり、周縁部が銀箔色のシルバーリップと呼ばれるものがあったりします。周縁部が黄色のものはゴールドリップといい、それぞれ異なる地域に分布しています。
シルバーリップが取れるのは主にオーストラリア海域で、ゴールドリップが取れるのはインドネシアやフィリピン海域です。白蝶真珠の色は母貝の種類によって違うのが特徴で、ホワイト・シルバー系はシルバーリップ種から、イエロー・ゴールド系はゴールドリップ種から生まれます。
淡水真珠は、主にイケイチョウ貝という大型の二枚貝から採取できます。琵琶湖などで養殖されていますが、中国から輸入している割合も大きいです。淡水真珠の形は種類が豊富であり、ポテトと呼ばれる楕円形のものが主流ですが、それ以外にも、ライスやドロップ、コイン、スティックなどがあります。
色も豊富であり、天然に作りだされるホワイトをはじめ、オレンジやピンク、パープルなどさまざま。無核のものがほとんどですが、養殖技術の向上に伴い、核を入れて養殖しているところも出てきました。淡水真珠の中には、南洋真珠と見間違えるほど真円で大粒のものも存在し、無核の淡水真珠やあこや真珠とはまた違う、独特のテリがあるのが魅力です。
ケシ粒のごとく小さく、人工核を持たないケシ真珠は、真珠母貝の生殖巣の中にできます。養殖期間中に母貝が取り込んだ砂や虫などの異物が、核のような役割を果たし形成されます。偶然、砂など異物が入り込んで真珠が形成されるため、色も形も一つとして同じものはありません。唯一無二の独自性がケシ真珠の魅力です。なお、ケシ真珠の中には楕円形や小石のようにいびつな形をしているものもあり、とりわけ小粒のものは「砂ゲシ」と呼ばれています。
生息地が奄美大島より南の琉球列島であるマベ真珠。マベ真珠はマベ貝の内側に直接半円の核を挿入しているところが他の真珠と異なる点です。核の形を変えれば、半円以外の形を養殖することもできます。真珠の中でも薄い結晶から成る真珠層を有しており、結晶が薄く規則正しく並んでいるため、厚い真珠層を作れます。
こうした性質により、虹色の干渉色を生み出せるのがマベ真珠の魅力です。カラー展開は、ホワイト系をはじめ、メタリックっぽさのあるオーロラカラー、ブルー系などさまざまです。
真珠は「サイズが大きければ良い」というわけではありません。大きくても品質が悪くては意味がないからです。サイズは価格を決める際にポイントとなる重要な要素ですが、真珠の種類によってサイズの基準は異なります。
例えば、あこや真珠の場合は6~9mm程度のものが多く、白蝶真珠や黒蝶真珠の場合は9~14mm程度のものが多いです。なお、養殖真珠では養殖期間が一年以内の物は当年物、1年以上のものは越物と呼びます。養殖真珠は養殖期間が長ければ長いほど巻き厚くなり、サイズも大きくなる可能性があります。
基本的に、真珠は前円に近いほど高い価値が付与されます。それに対し、歪な形をしている真珠が面白いという見方もあり、歪んだ真珠はポルトガル語で「バロック」と呼ばれています。どちらの見方を取り入れるかは人により、バロックのような世界に一つしかない真珠の形状を愛でるのも大人の楽しみ方といえるでしょう。
真珠の色は、光による干渉色と、真珠層が含む色素によって決まります。干渉色とは1ミクロン以下の極めて薄い層が干渉を起こし合い、神秘的なニュアンスを生み出すことを指します。色における明確な判断基準はなく、評価は時代のニーズで決まるため流動的です。
真珠の光沢は「テリ」とも呼ばれ、真珠の品質を判断する要素の一つになっています。真珠は水温や塩分濃度に過敏であり、その年におかれた環境によって真珠層は変化します。良い光沢がでるのは、真珠層が均一でキメが整っているものです。
カラーストーンがそうであるように、真珠も完璧ではありません。表面に傷跡が連続して見えるもがあったり、折り目やしわがあるように見えるものがあったりします。表面の傷が多いものは、真珠の耐久性への影響を考え、著しく価値が低下する可能性があります。表面の傷が少ないケースや、ドリルであけた穴、取り付けで隠せるほど小さい傷の場合は、真珠の美しさや価値を落とすことはめったにないでしょう。
真珠の層の質は光沢と密接な関係にあります。真珠層の下に核が見えている場合や、光沢のない白濁した真珠の場合、真珠層が薄い可能性が考えられます。真珠層が薄いと耐急性が不安であり、その分価値が下がるでしょう。
宝石品デザイナーは、作品によって意図的に色や形、大きさの異なる真珠を混ぜ合わせて組み合わせることがあり、ユニークな効果を狙っています。そのような場合、複数の真珠を使用していますが、真珠の品質要素がすべて一致していなくてはなりません。マッチングとはジュエリーにおける「調和性」のことであり、「互いに美しく見えるか」が審議されます。真珠一粒一粒の色や大きさ、品質のバランスが整っていると高く評価されます。