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エメラルドという名前は「緑色の宝石」を意味するギリシャ語からきており、その名前の通りにエメラルドグリーンと呼ばれる美しい緑色が最大の魅力です。その神秘的な美しさから古代ローマやギリシャでは「ヴィーナスに捧げる宝石」として崇拝されてきた歴史があり、世界三大美女の1人であるクレオパトラが愛した宝石としても知られています。
美しい緑色の輝きを持つエメラルドですが、実は「エメラルドと人間に傷のないものはない」ということわざがあるほど、内包物や傷の多い宝石です。宝石の価値を評価する際に内包物は欠点としてみなされがちですが、エメラルドに関しては個性の一部として考えられており、天然物であることを示す証にもなっています。
そのため、天然のエメラルドは樹脂やオイルに浸して傷を隠す処理が行われているのが一般的です。まれに処理を行われていないエメラルドもありますが、「無処理」や「ノンオイル」と記載されていないもののほとんどは処理済みのエメラルドになります。
エメラルドの品質を決める要素のなかで、最も重視されるのがカラーです。エメラルドの色合いは石に含まれるクロムとバナジウムの量によって決まり、最も高く評価される色は鮮やか、かつ暗すぎない色調の青緑色から純粋な緑色。さらに、石全体の色が均質で目立つ色帯のないものが、最も評価の高いエメラルドの色とされています。
色が濃いほど評価が高くなりますが、最も評価の高い色以上の濃さになると黒ずんだ緑色になることから、評価が下がってしまいます。そのほか、黄色みや青色みの強い色相のものも、エメラルドとは違う種類の石とみなされる可能性があり、価値が低くなる要素の1つです。
また、エメラルドは産地によって色合いが異なる宝石としても知られており、有名な産地であるコロンビアからは温かみのある純粋な緑色のエメラルドが産出される傾向にあり。アフリカ南部のザンビアでは、クールの印象を与える青みの強い緑色のエメラルドが多く産出されます。
エメラルドは加熱処理をすると色鮮やかな緑色に変化する性質を持っており、市場に流通しているエメラルドのほとんどに加熱処理が施されているのも特徴です。
クラリティとは宝石の透明度を指す言葉で、内包物や傷の程度によって品質が評価されます。エメラルドは内包物があることがほとんどで、それが天然物である証にもなっていることから、内包物があることを理由にエメラルドの価値が極端に下がってしまうことは基本的にありません。
ただし、内包物の量や位置によっては、価値が下がる要因になります。また、エメラルドを売却する際に輝きを良くしようと超音波洗浄機にかけたりお湯につけたりしてしまうと、エメラルドに施されているオイルが抜けて内包物や傷が目立ちやすくなるので注意しましょう。
一方で、内包物の入り方によっては、特別なエメラルドと評価されて価値が大きく上昇する場合もあります。高く評価される内包物の種類としては、猫の目のようなラインがあるキャッツアイエメラルド、6本の黒いラインが放射状に現れるトラピッチェエメラルドなどがあり。どちらも希少性の高いエメラルドとして評価され、さらに色が優れているものは、より高値で取引されています。
エメラルドの品質を決める要素のなかで、職人の腕に左右されるのが「カット」です。また、エメラルドは内包物や傷の多さから繊細で傷つきやすく、衝撃に弱いという特徴を持ち合わせています。そのため、少しの衝撃でも欠けやすく、熟練の職人でもカットに手を焼く宝石の1つです。
エメラルドをカットする際は、原石の石の深みや耐久性、内包物を考慮する必要があり、間違えるとエメラルドの持つ潜在的価値を損ねてしまいかねません。カットによってエメラルドの価値を左右する色合いが大きく変わってしまうことも、エメラルドのカットを難しくさせる理由です。
エメラルドの色として愛される青みのある緑色にするには、テーブルの方向が結晶の長手方向に対して垂直になるようにアレンジする必要があります。また、エメラルドの一大産地であるコロンビアで採掘された原石は色が表面に近いほど強くなっているため、慎重にカットしないと原石よりもはるかに薄い色になって評価を落とす場合があります。
有名なエメラルドカットは、衝撃で欠けやすいエメラルドのために考えられたものです。エメラルドに強い衝撃や圧力がかかったときに少しでも割れにくくする工夫がされており、広いテーブル面と周りの階段状のカットが特徴的な形状をしています。
ダイヤモンドの代表的なカットであるブリリアントカットが光の反射に着目した形状をしているのに対し、エメラルドカットはエメラルドの持つ美しい緑色を引き立てる形状をしているのが特徴です。ダイヤモンドやルビー、サファイアなどの宝石ではあまり見られないカットの形状をしていることから、エメラルドカットがエメラルドの代表的なカットとして知られています。
成形加工されたエメラルドのサイズ・重量はさまざまで、何百カラットにもなるエメラルドもあれば、極小のものだとサイズは1mm~5mm、重さは0.02~0.50カラットしかないものも存在します。センターストーンとして好まれる重さは、1~5カラットです。高級ジュエリーともなると、20カラット以上のエメラルドが使われることもあります。
ちなみに、ジンバブエのサンダワナにある鉱山で産出されるエメラルドは1mm角と小さいものの、色鮮やかなことで有名です。この鉱山から採れて成形加工されたエメラルドの平均重量は約0.05~0.25カラットで、1.5カラット以上のものはめったにないとのこと。1.5カラット以上のものは希少性が高いことから、高値で取引されています。
エメラルドはカラーやクラリティ、カットの品質が等しい場合、サイズ・重量が大きくなるほど価格が大幅に上昇することがあります。