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海の中の「植物」というイメージを持つ方も多い珊瑚ですが、実際は珊瑚虫(サンゴチュウ)と呼ばれる生物の一種です。
虫とつきますが、正式には「刺胞動物・花虫類」の「ポリプ」という仲間に分類されます。ポリプとは、触手を持つ巾着状の形をした刺胞動物の体型のひとつで、海の中のクラゲやイソギンチャクもポリプの一種です。ポリプが分裂して増殖し、複数のポリプが集まってサンゴの群体が形成されます。
珊瑚は、珊瑚虫のポリプの触手の数の違いから「サンゴ礁」と「宝石サンゴ」に分類されます。
宝石サンゴは、海岸などで見られるサンゴ礁とは異なり、深海でしか採取できない珊瑚です。サンゴ礁が浅瀬に生息するのに対し、宝石サンゴは深海に生息しています。
宝石サンゴは、サンゴ礁と比べて成長するスピードが遅いのが特徴です。中には1cm成長するのに約50年近くかかる種類もあることから、古来より希少価値が高いと重宝されてきました。
宝石サンゴは真珠とあわせて「海の二大宝石」と呼ばれますが、真珠とは違い養殖ができません。天然の宝石珊瑚がいかに希少性のある宝石かが分かります。
※参照元:テレ東プラス(https://www.tv-tokyo.co.jp/plus/lifestyle/entry/2019/019980.html)
珊瑚の宝石としての歴史は古く、紀元前2万年も前から続いています。世界最古の珊瑚は地中海で採れるもので、武器の装飾や宝飾品、壁画の装飾、楽器などに使われてきました。
宝石サンゴの赤い色が血を連想させることから、宗教的な魔除けとして使われていたこともあるようです。
日本に珊瑚が入ってきたのは仏教伝来と同時と言われています。日本で珊瑚が発見される前は地中海産の珊瑚を「古渡り珊瑚(こわたりさんご)」と呼び、貴重な細工物として輸入していました。
※参照元:KARATZ Gem Magazine(https://karatz.jp/coral-2/)
宝石に使われる宝石サンゴは、産地によって獲れる種類や色が異なります。宝石サンゴの主な産地は以下の通りです。
日本で宝石サンゴが発見されたのは江戸時代の終わりごろです。発見当初から主産地は高知県で、国内で産出される宝石サンゴの入札も高知県で行われます。
高知県産の宝石サンゴは赤サンゴ、桃色サンゴ、白サンゴなど、さまざまな色のバリエーションがあります。高知の加工技術は世界的に高く評価されており、研磨すると美しいツヤを発します。
イタリアやスペイン、フランス、ギリシャなど地中海沿岸で採取されます。地中海産のサンゴは色ムラが少なく、日本の珊瑚よりも色合いがやや明るいのが特徴です。地中海にあるイタリアのサルディニア島にちなんで、サルディという愛称で呼ばれることもあります。
ダイバーが採取できるほど浅い場所に生息し、採取エリアが広いことから希少性はあまり高くありません。
日本のほか、中国や台湾近海、フィリピン、ベトナムあたりまでのミッドウェイと呼ばれる海域で採取されます。
その多くがうすい桃色~セピア色をしていますが、まれに色のない白珊瑚が採取されます。純白の白珊瑚や象牙色の白珊瑚の場合、希少価値が非常に高くなります。
高知県室戸岬沖で採れる珊瑚が有名で、色合いの美しさと品質の高さから世界中で人気があります。赤珊瑚のなかでも血のように濃い赤色をした珊瑚は「血赤サンゴ」と呼ばれ、最高級品として評価されます。特にオックスブラッドと呼ばれる血赤サンゴは、世界で最も希少価値が高いとされています。
年々、採取量が少なくなっていることからますます希少価値が上がっているサンゴです。
日本産の赤珊瑚のうち、血赤サンゴよりも赤色の薄いサンゴを指します。西太平洋の海域に広く分布していて、日本近海では小笠原列島や五島列島、奄美大島周辺、沖縄、宮古島周辺でも採取されます。
赤に近い色から白に近いピンク色まで色調は幅広く、色ムラが少なく宝石にすると仕上がりが美しいのが特徴です。
イタリアのサルディニア島近海に生息している珊瑚で「サルディ」や「胡渡サンゴ」などとも呼ばれます。
色あいは赤サンゴに似ていて美しく、赤黒い色をしているものは高く取引されます。ただ、他の地域で採れるサンゴよりも材質がやわらかく、内部の傷や内包物が白濁して見えたり傷穴が多く見られたりします。
赤サンゴと同じく、日本近海の小笠原列島や五島列島、奄美、沖縄、宮古島周辺で採れるサンゴです。赤珊瑚よりも白っぽいピンク色をしているのが特徴で、薄いピンク色をした単一な色調は「エンジェルスキン」と呼ばれて重宝されます。
エンジェルスキンは日本では「本ボケ」と呼ばれ、その希少性から高値で取引されています。
日本沿岸から中国・台湾近海の東シナ海、南シナ海を経てフィリピンやベトナムあたりの広い海域で採れるサンゴです。白といってもほとんどが薄い桃色やセピア色をしているのが特徴で、純白のものはほとんど出回っていません。純白のサンゴと淡い黄白色の白サンゴは希少価値が高く、市場では高値で取引されます。
珊瑚は、採掘される産地によって色合いや材質が大きく異なります。大きさよりも産地や色の濃さが価値を左右する 宝石で、特に高知県で採れる血のように赤い「血赤サンゴ」は、希少性の高さから非常に高値で取引されます。
また、白珊瑚のうち純白に近い色や象牙色をしたものも希少性が高く、ほどんど市場に出回らないほど高く評価されています。良質な血赤サンゴや白サンゴは、買取市場でも高値を期待できるでしょう。
宝石珊瑚は、日本だけでなく地中海や太平洋でも採取されます。色合いの均一さや美しさによっては、日本産でなくても高値で取引される可能性があります。